寺に生まれたということでまずは寺を継承しようという考えは一昔前までの話。
スンナリと継承バトンタッチというものができればそれはそれでいいのですが、何せ親の束縛など受けず好きな事をやろうという考え方こそ今的なもの。
どちらかの変てこ宗教の二世さんとやらが、親の信心や束縛を受けずに自由に生きたいというのと同様のこと。
自分の人生ですから、どう生きようが勝手ですし、親の意向より「私」という世の中ですからね。
当流継承者の旨として当初から寺の血縁継続を念頭に入れ日々を送っているワケですが、それは親鸞さん以来の血脈を続ける本願寺系のそれと考え方は同じ。
他流に於いても最近は婚姻当たり前という風に変遷していますのでその血脈(その場合「けちみゃく」読み)も真宗のそれと変わらなくなっているような。
まぁ、御文「白骨」の「我や先、人や先」の通り、誰が何時亡くなるかなどわかりません。何しろ私が先、いや息子が先など大いにあることですから、悩むほど考えても仕方ないのですが、とにかく現状のこと後継者がハッキリしているということは今ある者にとっては安心に繋がりそれは有難いことです。
他流に於いてよく聞くことは住職が亡くなってその息子が早く亡くなり後継者が不在の場合、住職の奥さんは寺を出て行かなくてはならないというところ、さすがに当流にその手の事は聞きません。それは当流は婚姻による寺のネットワークがありますのでまずはその親戚寺が代務者を決めるなど差配し、宗教法人備えつけの書面の最後にある「住職は〇〇姓を名のるもの」の通り、親戚筋から養子改姓して入寺するか、宗教法人の備えを改定するかで対応することになりますね。まぁ当流は血脈を主眼に置くことから赤の他人が手を挙げたとしてもカンタンにはいかないのでした。
そんなこんなで、息子が10代の頃は「一体全体、将来どうなることやら」と感じていましたが昨日記した通り、今の彼は以前とは全く違っていました。奇跡的にとでも言いましょうか。
祖父も父も私も寺に本格的に関わったのは40~60代のこと。
色々な仕事に関わって、社会の人間関係、上下関係の辛さを嫌というほど味わってから・・・という感じ。
父は仕方なしに、私はおっかなびっくりでともに前の仕事を放棄して入寺したのでしたが彼の場合はまったく別。
学校を出て即坊主として法務の実践。
そして、そのお寺の法務を恰も天職であるかの如く、前向きになって淡々とこなしている不思議。
私は今の彼について何を取ってもその良き方向への成長に対し呆気に取られています。
親としては嬉しく有難いことですが、彼はアルバイトも一切したことがないくらい。
「社会の荒波」に揉まれた経験がありません。
まぁ「坊主しかできない」変人といったところでしょう。
各、「寺なんかやっていられるか」という具合に家を飛び出し、あるいは引きこもってしまうといった子の話、よく耳にする時代。
不思議なくらい有難いことなのです。
尚、もしもの時はと妹の息子に「寺をタノム」とは打診していました。
彼ならスグにでも改姓して寺に入ってくれるでしょうから。
別途「京都に1年行ってこい」と先日のバス遠足の際チャレンジを促しました。
寺に入らないにしろ「首都圏に坊さんの仕事はたくさんあるはず」と。
彼の今の仕事はサッカースクールのコーチですが、「二足の草鞋も悪くないだろ・・・」。
何より彼へのコーチと仕事の斡旋は息子ができますからね。
扨、御影堂門を上がって景色を楽しんだ後は皆さんをひき連れて参拝接待所へ。
大寝殿―白書院―宮御殿のお決まりコースを辿ることになっていました。
それぞれ今度の重要文化財指定ということで。
何度もこちらに来られた人もいれば初めての方もいらっしゃいました。
さぁ行くぞ~と気合が入ったタイミングでご担当より、「現在白書院と宮御殿は昼食中の方がいるので遠慮ください」とのこと。
またしても急なる変更を強いられて愕然とさせられましたが、まぁ当方も突然、それも昼時にその予定を突っ込んでいましたからね。私が悪かった・・・(反省点 諸殿拝観は昼時を避ける)
大寝殿の竹内栖鳳の障壁画を見ていただいたあとは白書院―宮御殿への半時計周りで一周するというのが私の習慣。ダメと言われても廊下回遊は悪いはずがありません。
やはり白書院では食事中のお客が見えました。
仕方ない・・・と呟きながら廊下を進むと能舞台⑥を見やる白書院の一番の目玉、最奥の書院造りの折りあげ小組格天井が廊下側の小部屋からさらっと覗けましたので、一部の皆さんにご紹介。
そしてグルっと裏側から宮御殿へ。
御影堂側の大土塁④の説明、長州勢の手のほか、毎度こちら側から火が広がったことを省みて、防火対策として積み上げたもの。
逆コースから廻ったため⑤の掲示板を見つけたのはすべて廻ったあとのこと。①②③は宮御殿の部屋の襖。
私は気づきませんでしたが御門主がこちらで昼食をとられていたようです。
奥方から「ドッちかられ(叱られ)て出入り禁止に!!」と警告を受けました。
私はペロっと舌を出して退散。
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