「弱いところ」と「お人よし」 善峯寺 

先日、「住職に聞かせる話ではないが・・・」とご門徒さんに前置きされ語られたその内容には驚かされました。

その手の件は私も初めて聞く話で興味がありましたのでそれに続く遠慮がちの前置き「恥ずかしいことでが」も制して、耳を傾けました。

その件に伴った複雑な家庭環境と登場人物多々にはなかなか頭の中で整理していくことは難しいものがありましたが。

 

しかしお話の内容は単純です。

親族、きょうだいの婚姻によって縁者になった方が病気治療のため某医療機関に入院しているそう。きょうだいの方は亡くなっていて子供もいません。

 

入院には連帯保証人・身元引受人の署名が不可欠というのが世のならい。

病院担当者からごく事務的にその書面を渡されて、きょうだいの年長者二人が「それでは・・・」という具合にそれに署名、提出したとのこと。

長引く入院生活のなか、しばらくして入院治療費の請求、督促状がその年長者の家に届いてからその方たちの無念後悔と焦燥の眠れない時間がスタートしたといいます。

 

縁者の入院治療費が滞納されている故に保証人へその請求が廻って来たのですが病院のシステムとしてその「機械的」は致し方ないのかも知れませんが。

おカネに関して「心配していなかった」というその縁者がまさか支払い不能となっているとは「腑に落ちない」とそのもやもや感をしみじみ語っていましたがその額が何しろ「半端な額じゃナイ」。

私も興味本位から「100万円くらい?」と聞けば「そんなもんじゃない」と「1000には届かないが・・・」の示唆。

 

その高額の請求につき支払いを躊躇していると病院の弁護士から訴状が。

そして地裁から公判と出廷を求められているとのこと。

その訴えられている方が自宅療養中の90歳間近の方。

第一回の公判では出廷不可の医師の診断書を提出したそうですが、第二回も裁判所から当然ながら「出廷」を促されたと。

 

裁判所の「出てこい」も機械的、事務的な流れですから仕方なし。裁判所は判決もそうですがそれ以前に「和解」を勧めるのが仕事ですからね。出てきて欲しいのはやまやま。

当人は今もはやこれまでと「裁判所で死ぬ」と言い出している悲惨。

しかし現実問題として自宅療養中の年金生活の高齢者に「借金返せ」と再三の出廷命令は酷なことですね。

当然に弁護士を依頼するおカネもあるワケなし。

降ってわいたような災難です。

未だ大元原因の御当人は病院のお世話になっているといいますから借金は延々に「増えるのみ」。

相当のプレッシャーで心労が増すのみと。

 

思うこと色々あります。

「連帯保証人」についてはまず借金と不動産賃貸等のその最悪想定に頭が巡りますがまさか病院の治療入院費についての保証人がその手の困惑に陥るなどとは思いもしませんでした。

借金のそれはともかくとして不動産業界ではその人的保証について見直しが進んでいるようですが緊急性が高そうに見える医療機関ではまだその保証人を立てる事などが当然の如く行われています

 

最近では病気の治療入院に関しても本人の事前対応、保険が整備されていますがその手の配慮への発想に至っていない方は多いもの。自身の病気入院費工面の件ですね。

まずはその確認をして、次にその方の支払い能力に関して当人含めて親族関係者で相談する必要がありますね。いくら緊急性があったとしてもあとあと厄介なことになるのは避けたいところです。

しかしまぁ父母であれば文句なしで署名捺印しますが友人などの場合「一呼吸」置いた方がベスト。知り合い親族の緊急入院となれば「仕方ないので私が・・・」という具合に何となくサインしてしまうものですが・・・。

その結果、齢を重ねたところに莫大な借金を抱え込むことになるのでした。

 

病院施設としてはその手の案件が多いようで、だからこそお抱えの弁護士を擁してその時は淡々と訴訟に進むというワケですね。

対応方法については単純に破産宣告の選択肢もありそうですが、叔父が言うには「カネのないところからは取れない」というのも当然なるところ。よって面と向かって係争する必要はないかも・・・と。

社会的信用というものを逸脱する考えですが、「無い者」からどう回収しようというので・・・それが現実。

社会のシステムのうちにはそういった表に出さない負債案件があってそれを「多くの中の例外」として受け入れ、消化する計算式があるものです。

小売業で「ロス率」という数字がありますが、まぁぶっちゃけ、どれだけ万引き等でパクられちゃったかを表す数字。

最初から「そういうもの(損失)がある」の考え方で、できるだけそれを少なくするかが課題となりましょう。

了解覚悟のうちなのです。

まぁ回収専門の仕事もありますが、社会性の高い病院ともなればそういった御仁を廻してくることはまずないでしょうね。

 

かといって支払い能力のある者からはバッチリ回収し法の下においてペナルティを課すというのがこの社会。

言ってみれば「弱いところ」と「お人よし」からとことん搾り取るというものです。

万引きかっぱらいの類は「やった人 捕まった人」に責任を負わせますが・・・

 

自身が借金などして大苦労のうえカネを搔き集めて工面するなど「できないものはできない」とそんな督促は無視するというのも一手なのかも。

少々「無責任」の雰囲気が漂いますがやはり「無い」ものは「無い」のですから支払いなどできるはずがありません。

 

また執行官が90歳のお婆さんのところに押しかけ、何か家探しして差し押さえ回収していくものか?

 

ついあまりにショッキングな件で殴り書きしてしまいました。

 

扨、昨日は年配者の「寺参りが辛い」の件記しました。

歩くことそのものもそうですが本堂に上がる階段がネックですね。

画像は拙寺のバス遠足で当初予定していたお寺、京都洛西の善峯寺。かなり前にその近くの十輪寺を歩いたあと上がりました。

私どものツアーは東山から始まりますので是非にこの洛西をと考えていましたがそれは皆さんの状況(できるだけ歩きたくない!!)を鑑み、諦めました。

あのお寺は広大で階段と坂多し。

その次の日に奈良岩船寺から浄瑠璃寺まで歩かせるという年配者には結構な無茶がありますので。