「そのすじょうおさえがたし」 額入り高橋泥舟詩句

つくづく自らの間抜けた押っ取り刀的短絡振りを再び思い知ったのがここ数日のこと。

一昨日は午前中にN師宅で刀を振り回したあとは午後から静岡に行く予定を入れていました。

数年に一度やってくる大嫌いな時間、運転免許証の更新です。

 

私の誕生月は7月でしたので「そろそろ限界」に達するところまで日延べになっていました(期限は誕生日から1か月まで)。

奥方も先日更新したのでしたが榛原警察署でのカンタンなものでした。

私が静岡まで行かなくてはならなかったのは2.5年前に青山通りで御用になったからです。

 

東京ルールの「左折信号」の存在を知らず、歩行者信号の「青」を見て左折したために御縄頂戴とあいなったのでしたが(白バイの待ち伏せ攻撃)、助手席にいた奥方は歩行者の有無を見て「GO!!」と大きな声で私を煽った都合、ご担当のバイカーに執拗に喰いついていたことが思い出されます。

私はこれ以上のトラブルは御免と「まぁまぁまぁ・・・」と奥方を宥めたことも。

しかしその件があっての静岡行脚ということですから今更ながらクサクサでしたね。半ば奥方のせいといってもいいかも知れません。自分は運転せず、いつも私に・・・それではリスクは私が負うだけです。

 

というわけで、なかなか「さぁ・・・」という具合に踏ん切りがつかなかったのですが、一昨日「買い物ついでに静岡へ」ということになりました。

 

まず車に乗りこむにあたって奥方から「召集のハガキは?」と聞かれて慌ててそれを取りに戻りました。

まずそれが無ければお話になりませんからね。

胸を撫でおろして東名牧之原に向かいますが、事もあろうか途中で免許証を忘れたことに気づいて再び自宅に。

勿論助手席から罵声の声が聞こえてきましたが、いつものこと。

再びバイパスを走りだすと、「ちょっとハガキを見せてみろ」と奥方が。

それを差し出してしばらく、「お前の講習は午前しかないぞ!!」。唖然呆然としながら、それなら「浜松の講習会場(静岡には3か所ある)はどうだ・・・」と再びそれに目を通してもらうと「13時の講習会がありそう」ということで急遽浜松方向にナビを入れて走行しばらく、「やっぱその講習はお前の更新講習に非ず」ということが判明。

腹立たしくも掛川でその時間を埋めるためデニーズで食事して帰ってきた次第。

ボヤキを記させてもらえばあの三つ折りハガキには小さい字でたくさんの情報を入れすぎなのです。

わかりにくいことこの上なし。ハガキが届いたとしてもマジマジと眺めずに大抵は放ったらかしにしているようなものですし。

 

というわけで心を決めて、準備万端、昨日は午前8時30分受付の静岡安倍川沿いの講習会場に単独で向かったのでした。

奥方は「そんな早くに店は開いてない」でした。

まったく一つの事を成すためのドタバタ、どこか抜けているのか・・・というところは私でも承知。今に始まったことではありません。

そもそもその静岡の会場は私が初めての場所で私の頭の中では静岡駅からしばらく国道一号線沿いの車検場のことだと思い込んでいました。

 

ああ面倒くさい免許更新。次回3年後はどうなるのだろう・・・と単純に。

「早とちりもイイ加減にしろ」と叱られますが、私は「頭の中のスイッチングが早すぎるだけだ」と反論していますが。

「そのすじょう おさえがたし」です。

講習会場でも講習中に一番前の席で水筒の蓋を誤って転がして顰蹙を買いました。しかしそういう時に限ってよく転がる。

 

さて、昨日ブログのN師です。

一昨日お伺いした際も掛軸を1本頂戴してきたのでしたが「コレ持ってく?」という具合にとてもお気楽です。

基本的に「気に入らないから」といいますが「表装すると高くつくからね・・・」でした。

私はその手の美術品、骨董品について「イラナイ」と断る理由がありません。むしろ好みの趣向ですし・・・

 

表記画像は2年ほど前にその「そっちで持って行って・・・」という具合に私が引き取ってきた額入りの高橋泥舟の詩句。

師の親戚の家から出たものといいますがそらも所有権は放棄しているそう。

要はN師もあまり興味がなかったということでしょうね。

「泥舟らしくない」というところもあるのかも知れません。

私は泥舟の心境というものに触れられて、悪くないと思っていますが。

解読は吉祥寺の叔父のもの。

 

其素情難抑吹出草(そのすじょうおさえがたし ふきだすくさ)

野川(のがわ)懇(ねんごろに)訪(おとなう) 風(かぜ)消息(しょうそく)塘畔(とうはん)残雪(ざんせつ)班料(わかちりょうする)

陽春(ようしゅん)緑ニ懸(みどりにかかり)見一鶯宿梅(いちおうしゅくばいをみる)

傍流指水(かたわらにさしみずながれ)北隠柳(きたにかくれやなぎは)過小橋(こばしをすぎ)清香灑(きよくかおりそそぐ)

巾幘不知誰(きんせきだれかをしらず)幾(いくばくか) 園妍締(そのはけんていにして)宛如校(あたかもこうのごとし)

此時(このとき)春(はる)未半(いまだなかば)寒暖造不備(かんだんふびをぞうして)芳展(かんばしくてんずる)

梢(こずえ)否咲(いなやさかず)差混(さしまじり)当(まさに)似黙(もだすににたり)転面(めんをてんずれば)咲向(さきむかう)

我玉容(わがぎょくよう)何(なにおか)悄(しょう) 寞(ばく)倍(ますます)月朧(つきはおぼろに)荒(すさみ)冷霞(れいか)和烟(わしてけぶり)暗相見(くらくあいみえ)声(こえは)綢繆(ちゅうびゅうとして)凩(こがらし)抔(など) 受とメ(うけとめ)香風(かおるかぜは)徐(おもむろに)撲顔(かおをうつ)

人有以(ひとありてもって)弄留(もてあそびとどまる)聲(こえ)自(おのずから)多(おおし) 情惑(こころまどい)極酒無力(きめざけはむりょくにして)曲罷(まげやめ)了(おわんぬ)天所(てんのところには)槧(よたかは)迷(まよい)靏(つる)遣揃白(そろうしろをつかわす) 慥(たしかに)東空(ひがのしそら)此時(このとき)栽梅(うめをうえた)愛橋際(いとしいはしのきわ)最(いと)欽水(きんすい)雪姿(ゆきすがた) 移向登(うつりむかいのぼると)定(さだめて)側(かたわらに)一別(いちべつ)曽(かって)如何(いかが)舊邸(きゅうてい)閑(しずかにして)寥寞(りょうばく)草(そう) 木(もく)都(すべて)無心(むしん)豈(あに)不遊往昔(おうせきにあそばざらん)今日(こんにち)恣(ほしいままに)討探(うちさがし)相依(あいよる)心莫逆(こころのばくげき) 俯仰(ふしあおぎ)慥(たしかに)如豈臥備(あにふしそなえるがごとし)不得心(ふとくしん)其(それ)慥(たしかに)故郷(こきょう)積涙(せきるい)重(おもく) 惶惻(おそれいたむ) 初春(しょしゅん)探梅(うめをさがして)懸(かかり)慥(たしかに)東国舊邸(とうごくのきゅうてい)有惑(まどいありて)句作(くさくす)

 

忍斎達人(にんさいたつじん) 晃(あきら)

 

鶯宿梅・・おうしゅくばい。梅の一種

消息・・変化するものごとのその時その時のありさま

塘畔・・とうはん。川や池の岸の土手のほとり

灑・・そそぐ

巾幘・・きんせき。頭巾

宛如・・あたかも~ごとし

我玉容・・わがぎょくよう。自分の顔

綢繆・・ちゅうびゅう。包む

槧・・よたか。弓+鳥

莫逆・・ばくげき。親しい親密な間柄

俯仰・・ふしあおぎ。身を伏せてあおぐ

惶惻・・おそれいたむ

忍斎・・高橋泥舟の号

晃・・・高橋泥舟の諱、政晃