既報の通り私の叔父は現役の不動産業ですが、最近はのんびりやっているようです。
以前若いころはいわくつきの「競売(けいばい)物件」に特化した業を個人でやっていました。
お相手はスーツを着た「その筋」の方たちです。
すべて「カネ」でもって〇か×(勿論交渉はつきものですが)の割り切り方をしますので「却ってやりやすい」といいます。
一般人ですと「いつまでもごちゃごちゃ面倒くさいこと」を言い続けることもある中、むしろ「スパッ」と解決できるのがイイといいますね。
それは何よりもバックに裁判所のお墨付きがあるからです。
今は「不動産競売物件情報サイト」なるものがありますが、裁判所が運営していますね。
今風のその「ややこしそうな人たち」は刃物など振り回しません。カネで解決。
何故にして「いわくつき」となってしまうか・・・その手段は色々ありますが、やはり「借金に夜逃げ」でしょうか・・・。
叔父さんから聞いた話を例にあげますが、たとえば借金で首が回らなくなった人が、「その筋の方」(まずは債権者が差し向けた)が債権者を無視した裏契約を負債者に持ちかけます。
一見「借金取り」ではありますが、「もう潮時、悪いこっちゃいわん」と同情して夜逃げを推奨します。どこか知らない場所に移り住んで「出直してがんばりや~」です。
そして夜逃げ用の資金としてまとまったカネを用意までしてあげます。
その代わりに印鑑と印鑑証明書に白紙委任状を複数用意させるというやり口です。破産してブラックリストに載る前にカネを借りまくるという手段です。困るのは金融機関のみ。
そして結果、不動産には複数の抵当権がついて権利関係がこんがらがります。
まあ数あるその手の不良物件の中からその「複雑」が解きやすく、対策用の出費を勘案して、「これぞ」という物件を落札しているようです。
今時はその辺りのうまみを知った人々も増えて競落が難しくなってるよう。
その叔父は今、ある民事調停の争いの進行中です。
弁護士を雇わない「本人訴訟」について以前私にその「簡単さ」について問い合わせがありましたが、結局はもっとカンタンな民事調停としたようです。
叔父さんも私と違い「とりあえず」面白そうなことはやってみようという性分で乗りかけた船と結構遠方まで通っているようです。
感想を聞けば案の定「おもしろい!」とのこと。
まぁ同じ法学部出身ですが、私は叔父さんのその探求心にまったく及びもしません。
趣味は「節談説教」と「古文書」ですが、今はどちらかの自治体から委託された大量の史料を解読しているようです。
しかし、何でもできそうな叔父の「難しい」というのが明治中期以降の古文書の解読だそうです。
それは江戸期まで「書」はそれなりの勉学の場にて習得するのが当たり前であり、その「勉学」は一定の規格のようなものがあったとのこと。
よって字体に癖の大小はあるもののだいたいは推測可能のようです。
しかしながら明治以降そのようなシステムは崩壊し、学校教育というしっかりした教育機関が確立するに至るまでは独自の学問が個々によって行われ、その結果、当事者内で「わかればイイ」ような殆ど記号化したような書体が繰り広げられた時期があったということ。
ということで統一性のない崩し字は読みにくいということになるようです。
さて、昨日は「わが身の計らいの空しさ」について記しましたが以前記した「藹」という文字のところで記した「自然法爾」を思い出しました。この「自然法爾」も真宗著名な4文字熟語でした。
またその際は
「自処超然 処人藹然」 という語も羅列しました。
いい言葉です。
「和気藹々」という語以外に「藹」が使用された例でしたね。
その「藹」は「噯」に似ているね・・・と叔父が言います。
というのも先日「ゟ」という字のところ、笠原家文書を紹介しましたが、その文書の中にくるまれていたもう一枚の似たような文書と木札について気になりましたのでご当家に再訪し撮影し叔父に解読を依頼したのでした。
木札には「本稿」の最後にあったご両名の名が記してありました。
これは推測ですが、土地がらみの紛争に発展した諍い事があってそれらを調停した結果の両名主?の「証文の札」なのかも知れません。
本稿に際してこの草稿はいわゆる下書きなのでしょうが、それを本稿に草稿を添付して組合のトップであったと推測する笠原八郎左衛門に報告をあげていた図なのでしょう。
当時は本稿に草稿を添付するならいがあったのでしょうか・・・。
何故に紛争だったか・・・それを断じるに至った理由が・・・
後ろから二行目に「噯」の字を見出したからだそうです。
この書面は草稿だけあってスゴイ崩しでまったく手に負えませんが・・・
この「噯」という字も面白い字ですね。
音読みは勿論「アイ」ですが、音が同じである「藹」とも十分に通じる意味があります。「ほんわかする」という意ですね。
ところがこの「噯」は「アイ」読みよりも別の読み方が一般的ですね。
①げっぷ
②おくび いき
③あつかい です。
①の意味ではバリウムを飲んだ後が一番思い出しやすいでしょう。それをすると「す~っ」と「ほんわか」しますね。怒られますが・・・
要はまた「胸につかえる何か」を出すという意味が②です。
「おくびにも出さない」の「おくび」ですね。
この字も「より-ゟ」と同様「おくび-噯」でワープロでも出ました。
③が本題。
今は「あつかい」といえば「扱い」(取り扱い注意・・・風)の字をあてますが本来「あつかう」とは「仲裁、調停」のことを言っていたようですね。
それがこういった文書に出てきたら紛争の対応があったことの示唆を推測できるのです。
本稿にはその文字はありませんでしたので、この草稿の方のこの字の出現によってこの土地の件、諍いがあったことがわかったということです。よって冒頭の「扱」も「噯」と解釈していいようです。
草稿(本稿はこちら)
扱証文の事
一才賀組代仲間甚三郎義十石
嶋ヘ引越候ニ付代之儀青志加右衛門新田中堤岡御座松ゟ
住吉浜川尻浜迄は代
取仲間出会人数 面割以
割合可申候尤才賀組合
衆中立会被申候節は
前々通才賀本代仲間ニ而
割合可申候猶又外浜
之儀は前々通割合
可申旨為申聞
取噯申候所相違 無御座候
為後日扱証文取替申所如件
画像③は一昨日小田原に行った際の寺の境内にて。
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酒井とも (月曜日, 27 3月 2017 10:10)
こんにちは。
御前崎市民です。古文書解読に興味があります。叔父様に勉強会を開催して戴けないでしょうか。
今井一光 (月曜日, 27 3月 2017 11:45)
ありがとうございます。
叔父は東京在住でやたらと依頼を受けては活動しています。
講習会も面白い企画とは思いますし、今後検討していきたいところです。
相良には「田沼塾」にて古文書を読む教室があったような気がします。
酒井とも (月曜日, 27 3月 2017 14:04)
こんにちは。
失礼いたしました。叔父様は東京在住の方なんですね。
ご住職のブログに度々、池新田の叔母様のお話が出ておりますので、
池新田の方と勘違いを致しました。お許しください。
御前崎市の古文書の会は、昨年に旧御前崎町の会が閉会しました。
現在、私は掛川の古文書解読の会に友人と通っております。
希望は池新田内の「丸尾記念館」や「図書館アスパル」等で
笑って引き受けてくれるような方を探しているのですが・・・
面白いジャンルですが、御前崎市の生涯学習への意気込みが薄いようで、
興味を持たれる方も少ない現状です。
今井一光 (月曜日, 27 3月 2017 16:44)
ありがとうございます。
いつも拙ブログに訪問いただき恐縮です。
新しい世界(古文書)に入ることは素晴らしいことだと思います。
古文書はのんびりゆっくり慣れていくことがコツといいます。
根気強くお励みいただきますよう。
酒井とも (火曜日, 28 3月 2017 16:53)
こんにちは。
少しづつですが、古文書の解読を楽しみます。
励みの言葉に感謝いたします。