高天神城近く上土方(旧大東町 現掛川市)の華厳院に興味深い古文書があります(場所はここ)。
かなり前にお寺の画像をアップしていたと思いますがどちらか失念してしまいました。
華厳院といえば遠州の古刹で伊豆の修善寺開山創建者がこの寺から出ているといいます。
言い換えれば華厳院なくして今の修善寺の繁盛は無かった・・・のかも・・・というところですね。
また、この華厳院という寺は近隣高天神城の歴代城主の庇護を受けていて、各寄進状など古文書の多数が残っています。
時折近隣の大東図書館でそれらが展示されていました。
その古文書の1つに井伊藤原南家説を「ほとんどそうだろう・・・」と確信しうる文書があります。
それは菊川での小和田先生の6月の講演会で指摘されていました。
また、当ブログでもお世話になっている「遠州河東出身者」さんが昨日ブログアップしていました。
明応九年庚申(1500)三月十二日
井伊直勝 遠江国華厳院に同国笠原荘峰田郷内の田を寄進する
井伊直勝寄進状 華厳院文書 〇大東町上土方落合
奉寄進笠原庄峰田郷堀内門田之事
(遠江国城飼郡)
合五段者
右 為崋山英公 心月信公両親 長寄進申候之上者 諸御公事等
少モ 別而役等不可在之候 殊ニ於子々孫々 有致其煩者 為公方
可被処御罪科状如件
明応九庚申年三月十二日 伊賀守直勝(花押)
土方上郷日南多谷
華厳院
衣鉢閣下
文書の写しは静岡県史資料編⑦からコピーしました。
内容は華厳院へ土地(田圃?)を寄進するというもので当時の有徳人たる統治権者が寺社への帰依の表れとしてよくあること。
それに関しては珍しいことではありません。「閣下」は貴人に対する敬称ですね。
面白いのがこの「井伊」の出現なのでした。
合わせて五反(1800坪?)の土地とのことですが、笠原庄峰田郷堀内門田とあります。
まず
①この地名の中に今もよく聞く苗字が4つもはいっていること。笠原・峰田・堀内・門田ですね。「門田」などは先日記したの田圃を中心にした地理的名字の発祥「いる場所」です。
②寄進状を発した人は「井伊伊賀守直勝」という武士階級を思わせる人の名。
笠原庄峰田郷に寄進できうる領地があった、「ハバを効かせてた」ということが特筆ですね。
この「嶺田」は上記地図を参考にしていただければと思いますが新野・横地とは目と鼻の先で、高天神六砦の一つ獅子ケ鼻砦から川を隔てて東側になります。黒田代官屋敷にも近い場所。
今のところあの遠州湖北「井の国の井伊氏」とその「点と線」を結びつけることはできませんが、「井伊直勝」と井伊家通字の「直」まで一緒というのは何か匂わす部分がありますね。
ただし「井伊直勝」といえば直政の長男、大坂の陣で名をあげた直孝の兄が有名ですが、コレは別人。
時代が約100年違います。
コメントをお書きください
河東村出身者 (木曜日, 24 11月 2016 10:28)
ハバをきかすで思い出しましたが、横地氏衰退後は、嶺田のさらに北側の内田(平尾、段平尾、高田含む)は、誰の管理だったのでしょうか?
今井一光 (木曜日, 24 11月 2016 11:03)
ありがとうございます。
御存知のように地元には内田氏の高田屋敷や黒田氏の屋敷跡がありますね。
黒田は室町期ですが、内田氏は鎌倉御家人の地頭クラスです。
そしてどこかブログでも記したと思いますが菊川北側には教科書に出るが如く
「荘園」を推する地名(半済 本所等)があります。
段平尾の横山さんという方も畿内の有力寺院の荘園(賀茂神社)の名を挙げていました。
賀茂という地名は菊川のほか遠州に残っていますね。
ということは有名無名、派遣地元を問わず「代官職」管理の曖昧な地であったと思います。この現象は「守護の登場」によって領地が確定しつつそのまま戦国期に突入していったのだと思いますが。
河東村出身者 (日曜日, 27 11月 2016 07:35)
ありがとうございます。
内田氏は今井了俊の九州攻めに名前がないことから、室町期にはもう内田にいなかったのではないかと思います。
戦国期直前は混沌とした状態だったのでしょうね(実報院からの嶺田井伊家への督促も、寄進したものを踏み倒していたからではないかと思います)
酒井とも (月曜日, 05 12月 2016 15:29)
こんにちは。
高田屋敷の内田氏ですが、承久の乱後に、石見国の貞松・豊田の地に地頭職を与えられ、建武の頃には南朝方として完全移住したと考えられます。
その後の内田氏は、姓を内田→豊田→益田氏に改めて、戦国時代には石見国益田家に服従し、江戸時代は萩藩 須佐益田家の老臣を勤め、二百石前後の知行を与えられていたようです。
ご参考になさって下さい。
今井一光 (月曜日, 05 12月 2016 17:25)
ありがとうございます。
新補地頭として西国下向後の内田氏の動向について興味ある情報をありがとうございました。どうぞまたよろしくお願いいたします。