今年の大河は視聴しないことはどこかで記しましたが、食後のまったりとしたひと時にぼんやりテレビを流すとすれば・・・お隣のチャンネルの「日曜美術館」に決定しました。同じNHKです。
本編は日曜の朝9時に放映されていますが、何せ日曜の朝などはゆっくり見る事ができる環境では無いですし、かといって録画するほどでもないとも思っていましたが、今回の件で吹っ切れましたね。
この番組は御存知の如くいたって真面目なものでオチャらけバラエティ系のものではありませんね。しかし内容といえば、苦手な現代アートというものを除いて、結構「歴史」に顔を出すような美術品クラスの品が紹介されるのは、知らない世界を多く覗き込めるという機会に恵まれて、これからの趣味も広がりそうです。
昨日朝のその番組は室町時代の水墨画家の「雪舟」がテーマ(1/11の夜8時に再放送)でしたし夜8時のそれは版画家の川瀬巴水の作品を特集していました。
川瀬巴水の版画の出来はなにより、その生き方を見てもその気概というものを感じます。
彼の画風は「晴れより風雪」「明より暗」「陽光より日没」「太陽より月」。どちらかと言えば薄暗さを感じます。しかし自然の中に営む人間の生活や日本各地の名所を題材にそれらの中にある人間そのものを的確に描写しています。また時として画に登場してくる人物の心中がわかるような気がしてきます。
彼の気概とは・・・、
当時日本画家世界に洋画が入り込み、もはや江戸の「浮世絵」をイメージする版画には「時代遅れ」との風潮が広がって、衰退の一途の時代だったそうです。
版画は画家独りだけでは仕上がらない作品なのですね。
画があがれば次は彫師と摺師の手による工程があるのですが、その衰退は多くの失業者を出すだけでなく、日本の版画の文化と継承すべき技術をも失うことになるのでした。
そのことに危惧を感じた川瀬巴水と画廊の渡邊庄三郎(「お宝鑑定団」で見かける浮世絵鑑定の方の祖父にあたる人)が
“新版画”という分野を切り開いて彼の作風としました。
一言で言って「平面」ではないということなのでしょうか。
当初は日本人ウケはしなかったようですが、海外からは好評化だったようです。やはり外国人の目は日本人のそれより相当冴えているのですね。
あのスティーブ・ジョブスが来日した際、ある画廊に行って彼の版画を「全部くれ」と言って買い占めたそうです。
画像はネット上に溢れている彼の作品の一部。
①荒川の月(赤羽)②潮来の夕③馬込の月④東海道 日坂⑤桜田門の春雨⑥時雨のあと(南禅寺)⑦銀閣寺の雪⑧弘前最勝院そして
⑨が遺作の平泉金色堂です。あたかも雪の階段を上りきった人物を当人に準えているが如くです。
蛇足ですが⑩が1/4の夕に撮影した地頭方の月。
日没と殆ど同時間に東の海から月が上りました。
1/5は今年初めての満月です。
川瀬の画に登場する風景は私の現実の放浪の趣味にも合致していないでもなく、その描写も重たい静けさがあって好みであります。
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