伊豆 真珠ケ淵の宝篋印塔型五輪塔と磨崖仏

先日来、「やっぱ西でしょ」と言わんばかりに近江でもさらに「西」をその名にいただく西光寺西教寺の大振りな五輪塔や守山の金森、懸所宝塔を続けざまに記していますが、そういえば駿東にもいいモノがありました。

こちら真珠院さん(場所はここ)の五輪塔も大きさもそれなりで豪華です。忘れられない墓石です。

 

下から「地」「水」「火」まではオーソドックスな五輪塔スタイルです。敢えて言えばそれらの上に積みあがる「風」「空」にあたる宝篋印塔の隅飾、九輪部分にあたる派手さを演出するために敢えて地味でシンプルとした「火」部分(△形)が印象に残ります。

当牧之原の清浄寺勝間田一族の墓にはその「火」部分のみが宝篋印塔のパーツになっていましたね。時代の変遷と場所によって相当な変化があります。

 

何より顕著なのは水輪(球)に彫られた仏様が四方面に刻まれています。

勿論阿弥陀様は「西」ですが他は、東-阿閦(あしゅく)仏、南-宝生仏(ほうじょう)、北-不空成就仏。この石塔は静岡を代表する石塔だと思います。

ちなみにこの「五輪塔」は創建年代の銘が地輪に彫られています。 正安四年(1302)で、静岡県内では最古と言われていますから鎌倉時代末期です。

 

この地はそもそも頼朝配流の地であり、その後の政権を握った北条家のお膝元ですからそのような遺物があることは合点がいきますね。日本史上の主役クラスが闊歩した地でした。

 

真珠院さんは現曹洞宗、元は真言宗の寺ですね。五輪塔に彫られた阿閦仏などは密教系の如来でした。

 

このお寺の背後の墓地の山の裾というか崖の下部には磨崖仏があります。必見ですが、風化、劣化が激しく雰囲気だけ。

今後の保存が危ぶまれますね。