小田原競馬場 花岳城 城源寺続き

「何を寝とぼけた事を!」と小田原をよく知っている方にでも「競輪場の間違いだろう」とご指摘を受けるところでしょう。

しかし、かつて小田原に競馬場があったのですよ。

 

 「花岳競馬場」といいます。

大正十四年(1925)に梅林の広がる「花岳城」の址の窪地に開業しました。観客席は周囲の段々。城山谷津の窪地に走路を設けた競馬場、天然の円形スタジアムとなったわけです。

 建設地の候補地としては国府津が当初あげられていたのですが、そちらでは住民の反対があったそうで、「それでは」ということで花岳城址の梅林に白羽の矢が立ったとのこと。

 

 皆さま御存知の「公営賭博場」、小田原競輪場の開業は昭和23年(1948)ですので、それより少しばかり時代が遡りますね。

 

  開業の経緯とその目的は「震災復興」。

大正十二年の関東大震災で壊滅した街を復興しようというものです。

 

 最近になって東京の「カジノ構想」というものが俄かに脚光を浴びていますが、おカネが必要になると「バクチの胴元をやろう」というのは昔から変わっていない短絡的なところ。

たしかその計画にも「東北復興」の文言もちらほら。

 

 話が飛びますが、ここ相良でも昔から各種私設の賭場が開帳されたことを耳にしています。そちらで身を持ち崩して家を潰したり、お上に検挙された話など枚挙にいとまが無いほどですね。

 

 不思議なのは何よりお上が胴元ならOK!というところ。

お国が大規模な施設を作って同時に「カジノ狂い」を生産(それも絶対に病的に)し、周辺の治安までも不良とさせてしまうというものです。

暗に人の不幸を作ってでも自由に使える資金を作りたいという魂胆のようにもみえます。

それも「自己責任」だから「個人の自由」という言葉で済ますのでしょうかねぇ。人はコントロールが効かないもの。あれは人間社会に極端な「不幸」というものをもたらしてしまうのです。

 「バクチはヤル奴が悪い」ということも「なるほど」なのですが。勝ち組は常に賭博を開帳維持する側、彼らは自らは賭け事にムキになりません。カモを集めておカネを捲き上げて堅実な儲けの方を取るのです。

 

 色々な国にカジノはある様ですが、まともな国はその害毒の方をケアして自国民にはハードルを設け、あくまでも受入れ海外ツアー客の専門にしていると聞きます。

東京カジノ構想は国が民の射幸心を煽って自らの国民の財布から金員を抜き取ろうとするように見えてしまうのは私だけでしょうか。それらの業界は大歓迎のようですが・・・。

 将来、顧客となりうる今の東京湾岸の子供たち、何か気の毒でなりません。

 

 さて、その競馬場の厩舎が城源寺さんの真ん前に在ったそうですが、境内の北原白秋の歌碑には、早い時間から見物に訪れた観衆の中にいて、なかなか競馬が始まらない待ち遠しさを子供の目から見た気持ちを歌ったものでしょう。

 

 城源寺の古林肇道住職によれば、当時現在の市役所手前にあった繊維工場の女工さんの日当が最低30銭(養成工初年約15銭?)の時代、馬券1枚は何と1円といいます。

小田原で有名な食堂「だるま」の天丼がやはりそのくらいの価格だったとも聞きますね

 

 恩恵を受けたのは牛小屋を改造して厩舎を貸した近隣の農家で、当然に彼らも客となっておカネを落としたそうです。

当初からその思惑通り相当の客を招いて大繁盛したそうですが呆気なく昭和五年(1930)に認可の取り消しを受けて廃止の憂き目に。

 

 取り消し理由は「十分儲かっているのに配当が無い」という出資者からの不満が沸き起こったことだといいます。

どのくらいの上前が転がり込んだのかは判りません。

 

 経理はデタラメ、有力出資者(3名?)の独善的放漫経営が目に余るモノがあってさすがの許可権者も認可を取り消したのでしょう。

それらに関わった人たちは小田原の有力「名士」たちで、現在においても当地(小田原以外でも・・・)で名のある会社ですね。

まぁ今の人たちにとっては「昔の話」でしょうから、過去の汚点、表に出すのは気の毒なお話。

ご興味のある方は各々お調べください。

 

 まぁ儲かり過ぎて目がくらんだのでしょうが、欲ボケもほどほどにしておけばきっと競馬場も長続きしたことでしょう。

カネ儲けが露骨すぎると不評をかい、自滅した例でもあります。

まぁ、余計なものが無くて良かったのかも知れないですね。 

 「震災復興」の期待も水の泡、一時的な賑やかしにはなったものの、地道にコツコツ励んでいった人たちが今の小田原を築いたのでした。

 

画像は城源寺本堂内に展示されている古き競馬場のパネル写真。

本堂は現代風、コンクリート製です。勿論本尊は阿弥陀如来。

 

尚、恒例相良の草競馬は4月27日(日曜)、相良海水浴場へどうぞ。