2015年12月末の完成予定の本山、東本願寺阿弥陀堂の工事現場へ。
前回2010年春に上山した際も案内いただきましたがその時の外観は瓦がまだ載っていました。
現在は全ての瓦と葺き土が外されて杉板らしき材が露出していて野地板の修復と点検が現在の工事の内容と思わせました。
当山の場合、野地板の上に杉皮を使用していましたが今回の修復時は杉皮の代わりにルーフィング材、そして土を使わない引掛け式の瓦にしました。
本山も土を使用せずに軽量化するそうです。
これほどの建築物の瓦に関してはまったく焼成から基本的な試験を繰り返して完成品を作るとのことでした。
京都盆地の冬の寒さ、夏の暑さという寒暖の差に耐えうる「強い瓦」をつくるために旧瓦よりも相当ステップアップされた試験データとなっています。
阿弥陀堂の建立は御影堂と同じ禁門の変のどさくさで長州軍に焼かれた後ようやく建てられたのが明治二十八年(1895)です。
その頃の瓦は焼成温度が950℃でしたが新瓦は1150℃とのこと。
焼成温度を高くすると密度が高まりますので硬度を高く吸水率を低く抑えることができます。
何でも水が入ったり溜まったりすることはモノの劣化を速めてしまうのですね。
焼成温度200℃アップにより荷重試験2倍になったそうです。
吸水率の変化は明治瓦13.7%→新瓦3.8%と格段の向上です。
ちなみに密度が高くなると目方が増えるため重量については変わらない(10㎏)とのこと。
画像①は御影堂の後ろへ回り込んで東山清水辺りを背景にしたものです。
一段めの屋根にライン状の境界で瓦の違いが判別できますが建物側(雨が直接当たりにくい場所)の瓦が旧瓦の再利用。その下が新しい瓦ですが、上段より強い雨が当たる真中の部分は二層になっています。それでも水の侵入があるためここの部分の腐食が著しいとのこと。
スグ向こう側の四角い箱が改修進行中の御影堂門の工事用パッケージです。
②~④が現在の阿弥陀堂です。島根の西福寺様に御案内いただきました。島根と聞くと、失礼ですがどうしてもイメージとして「遠くて未知な場所」ですね。在所は「山の中」と仰ってました。
⑤⑥が2010年の阿弥陀堂の図です。瓦に圧倒されました。
本山では阿弥陀堂瓦への記名印字は2013年6月まで募集しています。(1万円以上の御懇志の御進納された方)
記名用紙に書かれた文字をスキャニングして瓦へ転写するシステムです。
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